2011年9月23日 みどりの未来運営委員会
野田政権は、菅政権末期の20%以下の内閣支持率から50%台へと大きく回復し、民主党支持率も自民党を上回りました。政局に終始し震災対策も進まず、混迷する政治に絶望していた人々が、安定した政権運営への期待を込めた結果だと思われます。
しかし、9月13日の所信表明演説は、人々の期待に応えるものと言えるでしょうか。原発、経済、外交、政治のあり方などに関するビジョンは自民党政治と変わらない旧態依然たるもので、震災にともなう生活・健康保障や再生可能エネルギー促進など早急に求められている政策なども具体性・実行性は曖昧で、先送りの姿勢が明らかです。
「原発ゼロ」のゴールへ向けた脱原発ビジョンを打ち出すのではなく、「脱原発と推進という二項対立で捉えるのは不毛」「原発への依存度を可能な限り引き下げていく」としつつ、「地元自治体との信頼関係を構築」し「定期検査後の再稼動を進めます」として、原発維持の姿勢を明らかにしています。福島原発事故の全容と実態が明らかにならないまま、欧米の水準に達しない「ストレステスト」だけで、地元住民の不安や意向にも耳を傾けずに再稼動しようという方針です。一方で、再生可能エネルギーについては数値目標も掲げられませんでした。これでは成立したばかりの再生可能エネルギー促進法の実効性も大いに疑問です。
経済についても「昨年策定された新成長戦略」の実現だけが繰り返されています。グローバルな競争を前提として、企業の立地競争に勝つための補助金、TPP(環太平洋経済連携)への交渉参加の意向も表明されました。依然として外需依存・輸出依存の経済政策であり、菅政権には盛り込まれていた環境・福祉を重視した地域経済の再生や雇用創出のビジョンもなくなってしまいました。格差や貧困に対する社会的公正のためのビジョンや政策も、具体性のある積極的な提言はありません。
外交は、相変わらずの「日米同盟の深化・発展」であり、沖縄の普天間基地の県内移設の立場です。政治手法は、市民の声に根ざした民主主義に依拠するのではなく、官僚に依存しつつ、政権安定のための与野党大連合や民主党内への配慮を優先しています。
「国民の生活が第一」を掲げて登場した民主党政権に期待した多くの課題の解決が、野田政権になって今やほとんど反故にされ、破綻した古いビジョンや政治に戻りつつあります。私たちは、こうした古いビジョンや政治手法ではなく、「原発ゼロ」を明確にした脱原発プロセス、地域が自立する分散・内需循環型経済、脱成長でも豊に暮せる分かち合いの社会、日米同盟見直しの「共に生きる北東アジア」、住民投票・国民投票などの直接民主主義の活用などを掲げます。
そして、緑の党を設立し、国会に新しい風を送り込み、人々が希望を持てる政治の実現に向けて決意を新たにします。