2011年8月18日 みどりの未来運営委員会
福島原発事故によって引き起こされた甚大な被曝被害は、私たちに原発の停止・廃炉を一刻も早く実現すべきことを求めています。しかし政府は、北海道の泊原発3号機の営業運転への移行や、コンピューターシミュレーションにすぎないストレステストを行っただけで、破綻した耐震設計指針のまま、原発の再稼動をめざしています。
私たちは、政府に対し、停止中の原発と今後定期点検で停止される原発を再稼働させず、可及的速やかに、遅くとも来春5月までに国内の全原子炉を停止させ、脱原発を宣言することを強く求めます。
現在、原発の全面停止・廃炉に対していくつかの懸念が表明されています。
その第一は、エネルギー・電力不足です。しかし、全ての原発を止めても他の電力の活用によって電力供給をカバーできるという試算も示されており、政府の見通しでさえも来夏、不足量はわずか9%にとどまるとされています。たとえば東電も今夏は約740万kWの余裕があり、490万kWで稼働中の柏崎原発4基を止めてもまだ余裕があります。今後も短期的・過渡的には、適切な節電・省エネに加え、各地の自家発電やLNGコンバインドサイクル発電の活用などで、電力供給は確保できます。中長期的にも、原発に依存しないための再生可能エネルギーへの速やかな転換は、国や自治体による政策的な推進によって十分実現可能です。
第二に、経済や雇用への影響です。電力料金高に伴う消費や企業収益の低迷、企業の海外移転による雇用減少の可能性も叫ばれています。しかし、今私たちが目にしているように、事故を起こした場合の経済・財政損失、そして雇用への影響は甚大なものです。安全を置き去りにして目先の経済原理のみで原発を稼働させ続けるべきではありません。日本の電力料金制度や電力事業・送電網の独占も、高い料金の大きな要因となっており、この抜本改革によって高料金化の抑制は可能です。また、小規模・ネットワーク型のエネルギー転換が地域に雇用を生み出すことも、ヨーロッパで実証済みです。
一方、原発の停止・廃炉の実現は、事実上、国や電力会社の決断に委ねられたままです。国民投票で原発推進政策の転換を決定したヨーロッパ各国のように、重大な施策の決定権は、私たち国民が持つべきです。また、原発の再稼働の判断に、より広い地域の自治体住民が直接関わることのできる仕組みもつくるべきです。そのためにも、あらゆる情報が公開されより広い立場の科学者や市民の参加のもとで、徹底的な検証と対策を重ねる必要があります。
私たちは、広島・長崎に加えて「福島」の経験を世界に発信し、「核兵器も原発もゼロ」を願う人々とともに歩んできた世界の「緑の党」のネットワークを活かし、持続可能な社会を創っていくために、いっそう努力を重ねていくことをあらためて決意します。