2011年6月1日 みどりの未来運営委員会
東日本大震災の発生から2ヶ月半が過ぎました。しかし、今なお10万人を超える避難者が厳しい生活を強いられているばかりか、依然として予断を許さない原発震災が被災者に過酷な仕打ちを加え続けています。「復興」以前にいまだに数多くの被災者が緊急避難の状態にあります。「復興格差」とも言うべき状況が現れつつあるこの時期、困難な被災者が長くきびしい道のりを歩み続けるためには「先の見通し」が不可欠です。「暗闇を照らす灯り」を明確に示すことこそ政治の役割に他なりません。
私たち「みどりの未来」は、重要なこの時期にあたって、復興の柱となるべき原則を明らかにすると同時に、被災者の生活基盤回復に向けた要とも言うべき生活再建支援、住宅再建支援の分野に絞って具体的な提言を行いたいと思います。まず、復興に向けた政策の起点は、東日本大震災が「巨大・広域・複合」災害に他ならないという認識に置かれるべきです。そこから、以下の原則が導き出されます。
1.天災と人災からなる被害に「自己責任」はあり得ません。まず、被災者の生活の最大限の「復旧」が目指されるべきです。自治体行政そのものが壊滅的な被災により機能を失った地域も多い中、そのための第一義的責任は政府が負うべきです。
2.大災害において、行政の「前例主義」は排すべきです。被災の実態に即した「柔軟性の原則」を採用し、制度の拡充や新設を図るべきです。
3.被災現場に即した迅速かつきめ細かい支援のためには、被災自治体により広範な権限を与えるとともに、政府が被災者、自治体の声に正確に耳を傾けることが必要です。
4.復興に向けた政策は、被災者自身が置かれた状況とその希望にこそ立脚すべきです。被災者は客体ではなく、生存権(憲法25条)と幸福追求権(憲法13条)を持った主体です。「被災者主権」の原則が貫かれるべきです。
5.災害を生き延びた被災者が、避難や復興の過程で命を落とすという「復興災害」は本来、絶対に起こしてはなりません。残念ながら既にそれが起きています。「被災弱者」の支援にさらなる力が注がれるべきであり、予防原則に立ったきめ細かな対策が必要です。
以上の原則に立って、生活再建支援と住宅再建支援における具体的な政策を提言します。被災者アンケート(5月10日付、「毎日」など)において、「経済支援」と「住宅再建支援」が大きな要望として挙がっています。提言の早急な実行を求めます。
1.災害救助法に関して
(1)被災自治体が被災者の救援措置を迅速かつ積極的に行うことができるように、災害救助法第36条第3号に定める国庫の負担割合(現行、国:都道府県=9:1)を「百分の百」へと改正し、東日本大震災に遡及適用するよう求めます。
(2)災害救助法の23条2項には、都道府県知事が必要と認めた場合には被災者への金銭支給ができると明記されています。しかし、実際には「現物給付の原則」が踏襲され、現金給付の運用は停止されています。「ベーシックインカム(基礎所得保障)」の第一歩として、まず住居や資産を失った被災者、大津波や原発震災等により避難を強いられる避難者などに対して、必要な現金給付がなされるべきです。
(3)今回の災害は原発事故を伴う複合災害であり、生活再建のための問題解決と機動的な施策展開には省庁横断的な調整が必要です。そのために災害救助法の所管を厚生労働省から内閣府に移すことを求めます。
2.被災者生活再建支援法に関して
(1)今回、財源不足を理由に被災者生活再建支援法の満額支給が大幅に遅れており、片山総務相が特例として国の負担率(現行は国と自治体が折半)引き上げ検討を表明しています。当然の措置ですが、特例ではなく、国が全額を負担するよう抜本改正に踏み切り、一刻も早い支給を実現すべきです。
(2)支援法による支給は、「全壊」世帯最高300万円(基礎支援金100万円、加算支援金200万円)、「大規模半壊」世帯同250万円(同50万円、同200万円)に限定され、住宅再建のためには到底足りません。支給金額の上限を1000万円に増額すべきです。少なくとも850万円(2000年4月に超党派の自然災害議連が合意した額)への増額は必須です。
(3)今回、液状化住宅にも支援法を適用することになったことは一歩前進です。さらに、「半壊」や「一部損壊」に対しても支給を拡大すべきです。
(4)住宅のみならず、生業に必要な事業用建物(店舗や工場)を対象に加えるべきです。
(5)被災による世帯変動への対応、個人の尊重や社会参加の視点から見るならば、現行の世帯単位の支給から個人単位の支給へと改めるべきです。
(6)原発震災によって長期避難を余儀なくされている被災者は、住宅が損壊していなくとも、支援法2条2号ハの「居住する住宅が居住不能のものとなり、その状態が長期にわたり継続することが見込まれる世帯」に該当するものであり、支給対象に加えるべきです。