2011年6月1日 みどりの未来運営委員会
福島第一原発からは、大量の放射性物質が大気中や地下、海中にばらまかれ、放射能汚染は、東北・関東まで広がっています。すでに多くの人々が被曝し、放射性物質を体内に取り込んだと考えなければなりません。
警戒区域はもちろん、計画的避難区域、そして高い放射線量が観測されている地域に住む方々をできるだけ早く避難させることが急務です。しかし、それだけでは不十分です。今後生じうる健康被害を想定し、補償に応えるためにも、関係地域の全ての住民の外部・内部被曝履歴を記録することが必要です。
積算線量計の配布やホールボディカウンタによる検査はそのために必要で欠かせない方法のひとつです。特にホールボディカウンタは、今回のような事故の際、原子力安全委員会においても有効な検査方法として位置づけられています。
放射線被曝は、どんなに低線量でも健康リスクを増大させることがすでに明らかにされています。そのリスクの評価をめぐって議論があったとしても、まず、被曝の実態が正確に明らかにされなければなりません。しかし、3月11日から今日に至るまでそれぞれの住民の累積被曝の実態は不明であり、初期に飛散した放射性ヨウ素などは半減期が短く、すでに検出が困難になっていると考えられます。事態を放置したままいたずらに時間を費やすのは、被曝の実態を隠蔽するに等しいものです。事は一刻を争います。
これは、国策によって被曝を強制されている人々の、憲法で保障された生存権の問題です。その観点から、私たちは政府に対し、以下を強く求めます。
1.3月11日から現在に至るまで、放射能汚染が確認された地域に住んでいた、もしくは滞在したことのある全市民に被曝手帳を発行し、被曝の記録を所持できるようにすること。
2.これらの全市民を対象に、かつ緊急性に応じて優先度を考慮しながら、ホールボディカウンタ検査を無償で行ない、結果を記録すること。検査にあたっては、関係地域に設置されている官民の機器を有効に活用するとともに、日本原子力研究開発機構が所有する移動式ホールボディカウンタ車を導入し、さらに必要に応じて新規調達すること。
3.引き続き汚染地域に住む住民に積算線量計を配布(福島県内の各学校にそれぞれ一台では不充分)し、被曝線量を手帳に記録し続けること。
4.高い線量や検査値に異常が確認された場合、血液検査や尿検査を含め精密検査をおこなうとともに、治療や定期検診など必要な医療処置を行なうこと。また、これらの施策や検査などでもすべての被爆の実態を明らかにできるわけではないことを考慮し、特に関係地域の住民の健康管理を十分に行なうこと。
5.これらの施策や被曝線量の値によって差別などが生じないよう、特段に配慮すること。