2011年2月4日 みどりの未来運営委員会
12月の菅内閣による税制改正大綱は、「成長と雇用の実現」「社会保障改革と財源の確保」を掲げ、国際競争力を目的とした法人税5%減税や、所得税と相続税の少しばかりの増税を打ち出しました。菅政権は6月までに消費税も含めた税制の抜本改革案をまとめる方針です。この税制改正大綱は旧来の税制とその後の小泉改革を小手先で手直ししたに過ぎず、日本の社会と経済の行く末を見据えたグランドデザインが欠落しています。
私たちの2030みどりのアジェンダでは、「公正な税負担で社会保障の充実」を掲げています。その視点から現在の税制議論の問題点を指摘します。
誤った事実認識の法人税減税議論
参議院選挙で、民主から自民、そしてみんなの党などの保守系新党がこぞって掲げた」法人税減税「はまったくの愚策です。国際的にデータを比較しても、日本の法人税は社会保障負担分と合わせて考えれば、むしろ低い水準であり、また法人税減税が雇用確保に結びつく保証もありません。これらについては、東京都や神奈川県の税制調査会からも同様の指摘がなされています。
成長幻想と不公正を拡大する税制
企業減税政策をとる政党は「市民より大企業」重視が明らかで、その背景には「税優遇で国際競争力を高めれば成長がすべてを解決していく」という成長幻想があります。しかし、2002年から2007年の戦後最長の景気といわれた期間でも、税収全体は伸びず、一方で失業率は高止まりし、格差が拡大したことを忘れるべきではありません。
現在の議論とは逆に、社会保障費負担も含め、企業には必要な税負担を求めるべきです。雇用確保に必要なのは経済成長という夢を追うことではなく、限られた資源という現実を踏まえて、仕事や富を適切に分かち合うことです。
安心できるサービスには財源が必要
一方、法人税減税を批判する政治勢力からは、しばしば「増税反対」が唱えられますが、税制議論から逃げるのも未来への責任を果たしているとは言えません。
政府の役割は、人々が必要とする基本的ニーズを公共サービスとして提供することです。超高齢社会における医療・介護の負担増や、家族・地域・企業福祉の衰退を考えた時、社会保障の将来ビジョン、すなわち「人々が安心できるサービス」には財源が必要です。国際的にも、日本の国民負担率はOECD加盟28カ国中25位、租税負担率は最下位ときわめて低いのです。ただ、政権交代後も、ムダな公共事業や天下りなどの不公正な行政運営は目に見えて改善されておらず、このまま税負担だけが増えることは、決してあってはなりません。
公正でエコロジカルな増税の議論を
また、どの層が担うのかを曖昧にしたまま「負担増」を唱えてはなりません。
私たちは、公平性を重視した税体制を求めます。所得の再分配機能も考えた所得税の累進制の強化、金融資産課税、相続税の一層の強化こそ最優先で進めるべきです。また、環境税や通貨取引税新設といった、税制のエコロジカルな改革は、経済構造をグリーンに転換する上でも不可欠です。さらに、給付つき税額控除など、所得の低い人に負担がかかりにくい制度を設けた上での消費税増税の議論からも逃げるべきではありません。
私たちは、富裕層とグローバル企業に応分の負担を求めた、公正でエコロジカルな社会のための税負担の議論を活発に行うことこそが必要だと考えます。