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2011年01月20日

【論説】TPP参加をやめ、脱成長のエコロジカルな循環型経済に転換しよう

2011年1月20日 みどりの未来運営委員会
 
 菅政権は、「平成の開国」の名の下にTPP(環太平洋経済連携協定)への参加を進めようとしています。これに対して、すでに全国各地の農民をはじめ多くの人びとから疑問や反対の声が上がっています。TPPへの参加は、日本の経済と人びとの生活をいっそう破滅的な状況に追いやるものです。私たちは、政府にTPP交渉への参加をやめ、経済成長至上主義の発想から脱却して、エコロジカルな循環型の経済をめざす政策をとることを強く求めます。

TPP参加は何を狙っているのか

 TPPは、シンガポールなど4カ国から出発し、現在はアメリカやオーストラリアなどが加わって交渉が行われている9カ国の広域的な自由貿易協定です。二国間のFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)に比べて、「例外なき関税撤廃」の原則を特徴としています。したがって、農産物を含めた全品目について10年以内に関税を完全撤廃することが求められます。さらに、輸入牛肉の安全性規制や遺伝子組み換え作物の輸入制限など非関税障壁の撤廃が求められる可能性が高いのです。
 菅政権は、TPP参加の目的は「国を開き、日本経済を活性化する起爆剤。アジア太平洋の成長を取り込み、新成長戦略を実現」(内閣府、2010年10月27日)することにあると言います。TPP参加は事実上の日米FTAの締結であり、アメリカが関税を撤廃すれば日本の自動車や電機製品の輸出が大きく伸び、経済成長率を高めることができると目論んでいます。菅政権がTPP参加を急ぐ理由として持ち出すのが、国際競争の場で韓国に遅れをとってはならないということです。「韓米FTAが発効すれば、日本企業は米国市場で韓国企業より不利に」(内閣府)なる、日本がTPPに参加すればアメリカ市場で巻き返すことができるというわけです。
 このように、TPP参加の狙いは、韓国との競争に勝ち抜いて自動車・電機製品などの対米輸出を促進することにあります。それは、輸出部門のグローバル企業の利益をいっそう膨らませることになるでしょう。

農業が壊滅的な打撃を受け、食の安全が危うくなってもよいのか

 TPP参加が自動車や電機製品の輸出を増やすとしても、それと引き換えに農業は壊滅的な打撃を受けることは確実です。アメリカやオーストラリアなどの農産物輸出大国に対して例外なく関税を撤廃するのですから、安い農産物が大量に輸入されてきます。米作や畜産・乳製品の農家はほとんど経営が成り立たなくなるでしょう。すでに日本の食料自給率は40%(カロリーベース)にまで低下していますが、農水省の試算ではTPP参加によって14%にまで下がると予測されています。
 農業を単なる1つの産業と見なす人は、GDPのわずか1.5%、就業者260万人のうち65歳以上が6割を占めて後継者もおらず国際競争力のない農業が、日本経済全体の成長のために滅んでも仕方がないと言い放ちます。しかし、農業は、生命に直結する安全な食を提供し、また農産物の加工・流通と一体になって地域経済を支える役割を担っています。そして、森林とならんで自然環境を保全する重要な機能を果たしています。そもそも、工業製品と同じ生産性というモノサシを農業に当てはめることに根本的な間違いがあります。
 農業が果たしている重要な役割を無視して、関税をなくして安い農産物を輸入すればよいというのは、経済効率性だけから物事を見る発想です。そうした発想こそが、アメリカの自由化圧力を受け入れ、日本の農業を衰退させてきたのです。大量の食料を輸入に頼る日本のフードマイレージは、9002億トン・キロメートル(2001年)と韓国の2.8倍にもなり、世界一です。それだけCO2を大量に排出し、地球温暖化を加速しているのです。
 菅政権は、TPP参加によって農業が壊滅的な打撃を受けることについて、農業改革と戸別所得補償によって対応すると主張します。農業改革の柱は、農地の大規模集約の促進と高品質のコメなど輸出競争力をもつ農業への支援です。しかし、米価の下落で最も苦境にあるのが大規模農家であるという現実を無視して、規模拡大を持ち出すのは、従来の農政の失敗についてまったく反省を欠くものです。ブランド品の農産物を輸出する農家だけが生き残り、生産性の低い大多数の農家は消滅するという光景は、生命と健康を支え環境を守る農業のあるべき姿とはとても言えません。戸別所得補償も、生産性の低い小さな農家を温存する非効率な政策だという非難が強まっていますし、農産物価格がどんどん低下すれば税の投入額が膨らみますから、それがどこまで維持されるか疑わしいところがあります。

経済成長主義を脱却し、エコロジカルな循環型の経済へ転換しよう

 日本経済はこれまで、自動車や電機製品の輸出で稼いで大量の食料や資源を安く輸入するという道をひた走ってきました。TPP参加は、こうした経済のあり方をさらに拡大し固定化するものにほかなりません。しかし、輸出主導型の経済が2008年のリーマンショックによる対米輸出の激減によって大打撃を受け、大量の派遣切りを生んだことは記憶に新しいところです。
 菅政権が自由化推進のお手本に挙げる韓国は、1997年の通貨危機をきっかけに輸出主導型の経済に転換し、輸出依存率は日本の15%をはるかに上回る4割にまで高まり、サムスンなど韓国企業は高い競争力をもつようになっています。しかし、自由化によって農産物の輸入が激増し、畜産農家は激減しました。輸出部門のグローバル企業が稼いだ巨額の利益は働く人びとに還元されず、貧困層の割合はここ20年で倍増し13%にまでなっています。自由化が経済成長を促進する反面、格差や貧困や失業を増やすことは明らかです。
 今こそ、経済成長を最優先し、そのために自由化を推進するという発想から抜け出すべきです。自動車や電気製品の輸出で成長するという経済から、医療・介護・子育て・教育や環境保全や農業の分野で新しく雇用を創出する経済に転換する必要があります。大量の食料を長距離輸送で輸入する経済から脱却し、“地産地消”型の地域農業の再生を支援し、食料自給率を引き上げ、食料主権を確立することが求められています。モノやお金ができるだけ地域内で循環するエコロジカルな経済こそ、望ましい経済のあり方です。私たちは、TPP参加による自由貿易の推進ではなく、アジアをはじめ多くの国々やその生産者たちとの間で公正(フェア)な貿易の拡大に力を注ぐべきだと考えます。


posted by みどりの未来 at 05:57 | 政策・論評
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