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2010年12月14日

【見解】「尖閣」諸島(釣魚島)画像「流出」事件 −問題の解決は情報の共有、そして民主主義の徹底から

2010年12月14日 みどりの未来運営委員会
*一部修正しました(12月16日) 

 
 9月の尖閣諸島(中国名:釣魚島)海域での中国漁船衝突事件について、私たちは、日中両国の対立をエスカレートさせる結果を招いた日本政府の先の見通しのない対応の責任は重大であると指摘しました(10月13日付運営委員会見解)。
 その後、海上保安庁職員が「秘密」とされた衝突画像をインターネットで流出させ、国家公務員法違反容疑で捜査されています。この問題にはいくつかの側面があり、国民の中でも賛否の議論が高まっています。ここに私たちの見解を示します。


■「国家秘密」か「情報」か
 民主主義の下では、原則として国政のあらゆる分野が市民の「知る権利」の対象であるべきです。その上で、「秘密」にされるべき情報とは、非公知の事実であって、人権保障の観点から必要なもの、あるいは外交交渉の過程など、明確に保護するに値するものに限るべきです。
 今回の場合、このビデオは捜査当局にとって新たな情報とは言えず、これによる直接的な影響としての刑事訴追の可能性はほとんど無いと言えます。また、船長自身も中国で記者会見をしており、プライバシー配慮の必要性も低いと考えられます。今回の事件に関わる情報は、そもそも公開されてしかるべきものであり、私たちは、今回の職員の行為が「国家秘密漏洩」として処罰されるべきものではないと考えます。また、「情報漏洩」に対する重罰化や新法の制定の動きは、情報公開の流れに逆行するものであり、民主主義に反するものです。


■民主主義と行政官の行為
 しかし、政府の非公開決定がいかに不適切であったとしても、一行政官がその権限を濫用し、自らの意思で政府の方針を覆すようなことは、強く非難されるべきです。民主主義国家においては、国の方針の決定は、選挙で選出された政治家を通じて行なわれなければなりません。もちろん、政治家が民意に反した決定を行なった場合は、市民の非暴力的な行動によって方針を正す必要があります。しかし、民主的裏づけのない行政官が、重大かつ緊急な人道上の必要性もないのに、与えられた権限を利用して政治的意思決定を覆すことが許されれば、民主主義は根底から崩れます。しかも、海上保安庁や自衛隊などは、物理的強制力を持って海外の国や集団と対峙する対峙する能力を与えられた組織であり、一層の厳しい規律が求められます。
 私たちは、前述の通り、今回の行為は司法によって刑罰を科すべき性質のものではないと考えますが、その一方で、行政上、厳しく対処されるべきだと考えます。仮に行政上も不問に付されることがあれば、政府は最初の強硬姿勢、その後の非公開決定に続き、三度過ちを犯すことになると言わなければなりません。政府には、行政官の恣意に口実を与えないような、公正で一貫性のある「真の政治主導」が必要です。

■日中両国の「民主主義」とナショナリズム
 また、今回の事件の全経過は、数時間に及ぶものとされています。「衝突」に至る前に、どの海域のどの地点で、どのような経緯があったのか、事件全体の事実関係が置き去りにされたまま、その一方の当事者の手によって「44分」に編集されたビデオだけがインターネットやメディア上で「独り歩き」し、多くの日本国民の反中国感情を高めています。中国でも、統制された情報の中で反日感情が高まっています。そして、双方のナショナリズムと敵対感情の高まりが、とりわけ中国の劉暁波さんに象徴されるような民主化を求める市民をはじめ、両国国民の良心的な声をかき消し、飲み込もうとしています。
 「民主化」は、中国ばかりでなく、密室で事を運び、「国家秘密」の範囲を拡大し処罰を強化しようとしている日本の政治状況にもなお必要です。そして、日中両国の未成熟な民主主義こそが、両国国民のナショナリズムや敵対感情を高めている要因のひとつにもなっていることを見なければなりません。必要なのは対立のエスカレートではなく、平和と共生です。
 前回の見解でも示したように、私たちには、将来世代の利益を熟慮した冷静で賢明な対応、公正で民主的な政治姿勢こそが求められています。


posted by みどりの未来 at 16:47 | 政策・論評
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