2010年12月13日 みどりの未来運営委員会
(※下記条例案は、12月15日東京都議会本議会で採決が予定されています。)
12月より開催された東京都議会の定例会に「東京都青少年条例改正案」が再度提出されました。
6月に議会で否決されたのを受けて修正されたものとされていますが、とりわけ以下の点は以前と本質が変わっていません。表現の自由に対する萎縮効果が大きく問題点が引き続き残っています。
まず、本条例によって新たに規制が追加される対象が、実際の児童を実写するポルノではなく、マンガやアニメ等を扱った書籍や映画であることです。確かに、実写児童ポルノにおいては、実写される児童が現実に被害に遭っているのであり、こうした事例において加害業者を適正手続のもとで規制することは必要です。しかし、今回の規制の対象となるマンガやアニメは頭の中の想像世界であり、被害者=加害者の関係はなりたちません。これを「不愉快だから」あるいは「何かの影響があるかも知れないから」と言って規制するのは、いわば思想を規制することに他なりません。人の考えを規制することには、慎重の上にも慎重にならねばならないと考えます。
また、規制の対象が明確でないことも大きな問題です。これにより、漫画やアニメなどの表現への行政の関与が恣意的になるおそれがあります。既に、石原知事の会見でも「子供だけじゃなくて、テレビなんかにも同性愛者が平気で出るでしょ。」と条例対象以外にも言及するなど、あいまいな条例の運用基準の実態が明らかになっています。
そのため、この条例には漫画家などの表現者からいっせいに反発の声が寄せられています。そもそも、文化というものは、「いい」「悪い」と行政が判断するものではなく、多様な価値観の中で育ち豊かになっていくものです。名作であれば市民が自発的に選択して後世に残して行くものであり、質の低い作品であれば市民によって自ずから淘汰されていきます。
更に、この条例改悪は東京都だけにとどまらず、全国への悪影響が懸念されます。そもそも、子どもたちを不健全な環境から遠ざければ健全に育つという考え自体が間違いです。必死で規制しようとしても、問題を水面下に潜らせ、より深刻化させるに過ぎません。それよりも、いいことも悪いこともすべて明らかにした上でそれを正しく判断する自己決定意識を磨く事が大切です。
子どもを育てるといった、私たちの生活にかかわる大事なことを「行政に任せておく」のではなく、「市民ひとりひとり」が自ら決定し、変革していくことこそがみどりの政治の原点です。行政を肥大させ、表現規制を強め、表現者や出版社に萎縮効果をもたらせようとするこの条例の廃案を求めます。