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2010年09月29日

【見解】捕鯨問題をどう考えるか −生物多様性と海洋環境保護に基づく議論と解決を−

2010年9月29日 みどりの未来運営委員会
 
■はじめに
 今年(2010年)6月に行われたIWC(国際捕鯨委員会)総会は、捕鯨国・反捕鯨国間の政治的対立がより先鋭化する結果に終わりました。
 世界の緑の党や環境保護団体には反捕鯨の立場を取るものも少なくありませんが、わたしたち「みどりの未来」では、この問題についての内部議論はまだ十分ではありません。しかし、プロパガンダの応酬や特定の価値観に基づく議論とは距離を置いた上で、この問題の当事国でもある日本で活動する政治団体として、一定の立場をここに明らかにします。

■捕鯨に対する考え方の原則
 捕鯨の可否とその程度については、生物多様性の原則とそれに基づく適切な水産資源管理、伝統捕鯨・鯨食文化の保護継承の観点および科学的根拠に基づき、判断されるべきです。特に、伝統捕鯨や鯨食文化を有する民族集団および地域に対しては、自発的な資源管理の取り組みを促しつつ、これらの維持継承を支援すべきと考えます。
 一方、大型商業捕鯨については、上記の原則に加えて、農水産品のグローバル市場商品化がもたらす負の影響などから、その実施は抑制的に判断されるべきと考えます。

■日本の調査捕鯨をめぐる問題について
 日本の調査捕鯨は、その手法と実施海域において大型商業捕鯨を引き継ぐものですが、これに対する世界からの抗議は、日本人の伝統捕鯨・鯨食文化への愛着を刺激し、反捕鯨運動への強い心理的反発を生んでいます。日本政府や関係者は、この心理的反発を利用し、調査捕鯨支持の世論へとすり替えようとしています。
 しかし、NGOの調査や「鯨肉事件」などを通して、調査捕鯨の不透明な実態も明らかにされつつあり、利権や天下りの問題も指摘されています。伝統捕鯨・鯨食文化の維持の必要性や可能性と、施策としての調査捕鯨の問題は、冷静に区別して論じられる必要があります。また、不透明な実態を伴う施策から得られた「科学的知見」は、そもそも信頼性に欠けると言わなければなりません。
 一方、調査捕鯨に対する暴力的な抗議行動も問題となっています。一般に、権力による弾圧や不当な政策実施が急迫した状況になった時、これを阻止するための直接行動は市民に認められた根源的な権利です。しかし、直接行動の基本的な立ち位置は「非暴力」にあるべきです。

■「みどり」の国際議論と共同決議
 わたしたちは、今年(2010年)5月の「アジア太平洋みどりの台北会議2010」で、反捕鯨の立場を取るニュージーランドおよびオーストラリア緑の党と議論を重ね、南極海域をサンクチュアリとすることを目指す共同決議[註1]を実現しました。この決議は、南極海域の生物多様性と海洋環境保護を目的に、捕鯨のみならず資源開発・利用全般を制限し、沿岸諸国にも厳しい制約を課すものとなっています。国際政治において異なる立場にある当事者の間でも、徹底した議論と対話により、問題の本質を明らかにし、新たな解決策を見出すことができるのです。

■わたしたちの立場と提言
 わたしたちは、まず、日本政府・関係者に対し、調査捕鯨で得られたデータを科学的に検証可能な形で公表するとともに、調査捕鯨をめぐる人や資金の流れ、鯨肉の利用・流通実態などを徹底的に明らかにするよう求めます。また、捕鯨問題の全ての当事者に対し、政治的対立とプロパガンダの応酬に終止符を打ち、問題の本質的な解決に向けた議論と対話へ立ち戻ることを強く求めます。その中でわたしたちは、上に述べた「共同決議」の国際合意をひとつの解決策として提案します。
 また、暴力を伴う直接行動に対しては、暴力とその支援の停止を強く求めるものです。





[1] 決議の内容は、以下の通り。

国際生物多様性年である本年行われたこの会議(APGN)は、
世界のすべてのナショナルコミュニティに以下を要求する:
1.南極および南氷洋を永続的に世界遺産に登録すること
2.この地域(南氷洋)の野生生物、鯨類を含むすべてのエコシステムを保護すること
3.南極地域とその生物多様性を脅かす気候変動、海洋の酸化および人類による直接的な影響から保護するための緊急アクションを取ること

 
 
posted by みどりの未来 at 00:53 | 政策・論評
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