2009年9月20日 みどりの未来運営委員会
歴史的政権交代は大転換への好機
有権者・市民は自公政権を見限り、政権交代を選択した。民主党は三〇八議席を獲得し圧勝、自民党は一一九議席に激減し惨敗しました。
私たちは、この戦後史を画する歴史的な政権交代を歓迎します。
その理由を二つ挙げます。
一つは、自民党政権が戦後長期間にわたって依拠し作り上げてきた業界と官僚を優先する中央集権的な利益誘導政治に対して、有権者・市民が明確にノーを突きつけたからです。
二つ目の理由は、有権者・市民が自らの投票行動で、政治を変えることができるという経験と実感を共有したからです。「政治不信」「政治的無力感」を払拭し、有権者・市民が政治の主人公となる大きな一歩となるでしょう。
私たちは、この歴史的な政権交代を、日本の政治と社会を大胆に転換するための好機と考えます。
ビジョンなき民主党 マニフェストの限界
しかし政権交代は、歴史的な出来事ではあっても、大きな転換へのきっかけにすぎません。民主党のマニフェストは、個々の政策においてはNGOの考え方や市民感覚を反映させており、支持できる内容も盛り込まれています。しかし、基本理念とビジョンが定まっていないため、個々の政策の間の矛盾やあいまいさを抱えています。
たとえば、CO2などの25%削減を打ち出しながら、同時にCO2などの排出を拡大させる高速道路の無料化や道路暫定税率の撤廃を掲げています。また、戸別農家所得補償政策を掲げつつ、農業を衰退させるアメリカとのFTAを推進しようとしています。さらにはマニフェストの目玉と位置づけられている子ども手当ての拡充は、保育サービスの拡充や長時間労働の解消などがセットで実現されなければ有効な子育て支援政策とは言えません。
また、自民党と同じく経済成長の回復によって財源を得ることを想定しています。つまり経済成長なくして民主党のマニフェストは成り立たないという限界を持っています。
経済成長に依存していては人々の持続可能な「暮らしの安心」は実現できないと私たちは確信しています。
経済成長を実現するためにはグローバルな競争に勝ち抜かなければならず、格差の拡大、雇用の不安定化、長時間労働は避けられません。経済成長至上主義からの転換なくして、地球温暖化を防止し、気候変動による被害を食い止めることは不可能です。そして財源なきバラマキ政策では将来世代に莫大な借金を残すことになるでしょう。
脱成長・脱競争の定常型社会へ
有権者・市民は政権交代を選択しましたが、民主党の政策を全面的に支持したわけではありません。
しかし民主党のマニフェストが踏み込んだ政治・社会変革の流れは、民主党の思惑を超えて、市民自身の政治的空間を拡大し、さまざまな市民運動を活性化させる可能性を開いています。
私たちは、その可能性を市民運動と連携して現実のものとしつつ、さらに大胆な政治と社会の転換へと進めるべきだと考えています。その過程でビジョンなき民主党政権は、矛盾と限界を顕在化させ、人々の期待に応えることができなくなる時期が来るでしょう。
脱成長・脱競争の定常型社会の基本理念・ビジョン=「エコでスローでフェアな社会」を、より説得力と魅力を持つ制度構想と政策に具体化する作業を急ぎつつ、地域で、そしてやがて国政でも、目に見える政治勢力として登場していくために、運動を展開していくことが必要です。