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2009年06月30日

6/30up:【意見と提言】「90年比8%減」は低すぎる 低炭素社会へ大胆に踏み込むべき 地球温暖化対策の中期目標発表についての意見と提言

2009年6月30日 みどりの未来・運営委員会
(7月5日一部修正;修正箇所は赤字)

 去る6月10日、麻生総理は、地球温暖化対策の中期目標として、1990年比8%減とすることを発表しました。この問題について、私たち「みどりの未来」運営委員会は、以下見解を表明します。

1.まず、議論の前提として、温暖化防止対策の必要性と根拠、そして「中期目標」設定の意義をあらためておさえておく必要があります。
 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告第一部会報告(2007年2月)は、「20世紀半ば以降の世界平均気温上昇のほとんどが、人間活動による温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高い」と明言しました。そして、産業革命前からの気温上昇を2-2.4 度にとどめることを目標にした場合、先進国全体の削減目標として2020年までに25〜40%(1990年比)削減、2050年に80%以上の削減が必要だとしています。しかも、現在におけるいくつかの観測データは、この4次報告の予測を超え、温暖化の進行は最も危険なシナリオをたどっているとされています。高まる緊急性に対し、4次報告よりも厳しい限度目標の必要性も指摘されています。
 私たちは、地球と人類の未来を左右する重大な岐路に立っています。これまで大量の温室効果ガスを排出し、蓄積させしてしまった人間社会−特に先進国は、温暖化対策の中期目標を、単に長期目標への通過点としてではなく、あるいは「国際合意」への消極的な追従ではなく、科学的知見に基づき、危険を回避・克服し、「低炭素社会」[1]を実現するための積極的かつ具体的なプログラムとして、これを設定する必要があることを再確認しなければなりません。

2.こうした観点から考えれば、麻生総理の発表した削減目標は、多くの環境NGOなどから指摘されているように、きわめて不十分で、環境大臣の求めた値にも大きく届かず、国際社会を大きく落胆させるものです。温室効果ガスの排出削減に抵抗する大企業などの意向が強く反映された産物だと言わなければなりません。
 日本政府は、日本の目標値が国内削減枠のみで実現するものであり、基準年を2005年とすれば「15%削減」であるとして、途上国への支援枠を組み込んでいるEUの削減値を上回るものだと強弁しています。しかし、エネルギーの浪費により排出量が拡大した2005年を基準年とし、EUのようにもともと積極的な削減努力を重ねてきたところと単純に比較することは、まやかし以外の何物でもありません。
 また、日本政府がこの中期目標設定の根拠のひとつとしているパブリックコメントは、温暖化政策による国民負担のみを強調し、温暖化による莫大な社会リスクや、温暖化対策をとることによって生じるメリット[2]を隠した恣意的な誘導によるものでした。しかし、環境NGOなどによる独自調査等によれば、むしろ多くの国民が麻生政権の温暖化対策を不十分と考え、25%以上の削減目標を支持していることが明らかになっています。

3.環境省は、温暖化に伴う影響やリスク、対策をとった場合のメリットなどをすでに明らかにしています[2]。また、同省のプロジェクト「脱温暖化2050研究」[3]は、「2050年には70%の温室効果ガス削減が可能」とし、「低炭素社会実現の費用はGDPの1%(2050年推計値換算)」「早期省エネ投資で長期的節約効果」「低炭素社会は都市、農村、社会システムを大きく変える」などと述べています。政府内部の議論においても、温暖化対策の必要性や実現可能性、そしてその意義を明確に示しているのです。
 麻生政権は、経済界の意向に左右されることなく、身内の環境省の主張や提言からさえも大きく矛盾するようなまやかしの削減目標を撤回し、市民、NGO、研究者との緊急かつ真剣な議論を進め、科学の要請に応え、温暖化防止の根拠と意義を正しく理解した目標をあらためて設定しなければなりません。
 また、「国内削減枠」の拡大にとどまらず、京都国際会議でのホスト国としても積極的なリーダーシップを発揮し、EUなど他の先進国と共に、途上国の温暖化対策への資金と技術を提供することによって、地球規模の対策における先進国としての責任を果たすべきだと考えます。

4.私たち「みどりの未来」は、経済成長至上主義のもとで破壊されてきた環境や地域社会の再生と、真に人間らしい暮らし方や働き方の実現を目指します。そして、世界金融恐慌やピークオイル問題を脱・経済成長至上主義の好機ととらえ、温暖化対策を積極的な「グリーンニューディール政策」として展開することで、再生可能エネルギーの促進、持続可能な産業の育成と雇用創出、そして脱原発・低炭素社会の実現へと大きく舵を切るべきだと考えます。
 そうした政策を実現するためには、温室効果ガス排出量の削減を進める具体的な制度に加え、経済構造の根本的転換と、それを誘導する税制度や政策、その基盤となる予算構造、それらを実現するための民主的な政策決定プロセスの構築など、政治の根源的な変革が必要です。先のEU議会選挙において、緑の党が「グリーンニューディールへの投票を=緑の党への投票を!」と訴え、大躍進した事実は、そうした政治を牽引する役割と責任が、同じ先進国でもある日本において、私たち「みどり」の政治勢力にあるという自覚を促さずにはいられません。
 そうした責任から見た時、私たちの力はまだ弱く、小さいものです。しかし、日本の経済や政治が地球に与える影響の大きさを考えれば、私たちの歩みを止めるわけには行きません。
 私たちは、温暖化防止対策が、人類と地球のリスクを回避するにとどまらず、豊かな未来を切り開く可能性と意義があることを、地域や自治体においても広く訴え、世論を喚起します[4]。そして、「緑」の未来への希望を共有する国内外の組織やグループ、NGOや市民と連携しながら、今後も議論を深め、活動を強化していく決意です。
 そうした連携や国際的なネットワークを活かしながら、特に12月のCOP15に向けて、政府の中期目標をさらに引き上げ、それを実現させるために具体的な活動に取り組んでいきます。多くの皆様の御協力を求めます!


[註]
[1]:「低炭素社会」という言葉は、日本においては環境投資など投機的な要素を背景に、経済成長を維持しながら炭素排出を削減する文脈の中でも用いられている。ここでは、私たちは、脱・経済成長を前提にして、経済システムや働き方・暮らし方・都市と農村の関係の変革によって、炭素を大量に排出しない社会という意味で用いる。
[2]:環境省報道発表資料「地球環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト「『温暖化影響総合予測プロジェクト』成果発表について〜地球温暖化『日本への影響』-長期的な気候安定化レベルと影響リスク評価-」
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=11176
[3]http://2050.nies.go.jp/material/2050_LCS_Scenario_Japanese_080715.pdf
[4]自治体で可能な、推進すべき対策についての私たちの主張を、近く追加で公表する。
posted by みどりの未来 at 18:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政策・論評
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